| phase 2 伏線
1998年。春にはAXのローンを完済して過去のすべての債務から解放されたものの、唐突に入籍して周囲を驚かせたりした。それに伴って引っ越しをしたり、夏には披露宴をすることになったりで、自動車どころではなかったというのが正直なところだ。 その頃、私がいつもしていたことがある。今で言うところの妻と一緒にいる時、例えば自動車に乗っている時などだが、SLKを発見すると「あっ、SLKだ」「かっこいいなあ」と必ず言っていたのだった。取り立てて意図するところがあったわけではなく、心からの憧憬が言葉になって出てきただけなのだが。 明けて1999年2月。MacWorld Expo Tokyoのために幕張に出張していた私は、同行していた井邊くんと飲みに行くために幕張プリンスからぶらぶらと幕張駅方面に歩いていた。井邊くんはルノークリオ16Vに乗っていて、仏車仲間でもある。自動的に自動車の話題になることが多い。 「なんかね、最近新しい車が欲しい気がするんだ」と私は言った。 私は元来、小さな自動車が好きなのだ。小排気量(=低出力)の小型欧州車につつましく乗るのはかっこいいことだと思っている。全高1.8mの大男である私が小さくてかわいい自動車に乗っている姿は、ある種のこっけいさを伴うものであることはわかっているのだが、好きなものは致し方あるまい。AXの前は、VW Poloの初代モデルに乗っていたのだ。井邊くんもクリオの前はルノー4GTLだったし、私の好みを十分に理解していたと思う。 彼の最初の提案は、意表をつくものだった。 |
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