SLKと暮らす。
phase 6 誕生日・午後0時30分

即納可能でかつご希望通りの仕様のSLKさまの降って湧いたような登場に、私はとても浮き足立っていた。これはもう買うしかないでしょう!さっきまでの考えは水に流してあげるよ!

「私はとてもそれが欲しいです」
私は、中学生の英文和訳のようなセンテンスを口にした。
「でも、私一人で決めるわけにはいかないので、結論を出すのは妻と相談してからでもよいですか?」
「ええ、もちろん」

私はさっそくしのごん(注:妻の呼び名)の携帯に電話して言った。
「202号線をずーっと西に行って金龍の先の左側にベンツ屋があるから、すぐ来てくれ」
「何言ってるの」
「詳しいことは後で話すから、井邊くんにそう言って乗せてもらって来てよ」

妻を待つ間、ヤナセ小田部支店の上品なお姉さんは、ボディカラー見本帳をショールームの白いSLKのドアに添えて、こんな感じですよ、と説明してくれた。
「現車は今は別のところにありますので、こちらに回してもらいましょう」

ほどなく、しのごんとしのごんの折り畳み自転車・しのごん号を積んで、井邊くんのクリオ16Vが到着した。私はさっそくコトの経緯をかいつまんで説明し、欲しいんだけどどうだろう?と問うた。
「何考えてるの」
「いや、だから、欲しいんだけど…」
「いくら?」
「えーと、ごひゃくすうじゅうまんえんかな」
「そんなお金あるの?」

うっ。そうなのだ。そもそも今日ってSLKを買う気はさらさら無かったのだ。そんな金額をポンと出せるほどにお金の在庫があるはずも無いのだ。ローンにするかウエルカムローンにするかくらいしか選択肢は無いのだ。あるいは、諦めるか、だなあ…私は、頭の斜上にホワワ〜ンと浮かんでいる“黄色いSLKに乗った自分の姿”が急速に縮んでいくのを感じた。

そうこうしているうちに、黄色いSLKがショールームの前に入ってきた。ボンネットや屋根などには保護用の透明なシートが貼ってあり、まっさらの新車であることが見て取れた。運転してみますか?という申し出を、断腸の思いで辞退し(本当のところは乗っても乗らなくても欲しさには変わりがなかったからだ)、ヤナセの人の運転で助手席にしのごんを乗せて走ってきてもらった。

この時点で、私はすっかり金勘定モードに入っていた。


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